備忘録

個人的なメモで使っています

女性誌アウェー

極度に人見知りをする私のような人間にとって、女性ファッション誌は美容院にて美容師との会話を防ぐ便利な道具としてお世話になることがあるものの、同時に私は美容に殆ど関心がないため、日常殆ど接することがない代物である。

先日、流石に毎回前髪カット1,000円ばかりお願いするのも気が引けるという小心な理由から、1時間程度女性誌のお世話になる機会があった。施術中眼鏡をはずしたため、極度の近眼である私は手元の雑誌すら覚束ない状態に陥り、内容がぼんやりとしか見えなかったせいかもしれないが、おじさま向けタブロイド誌を寄越してくれた方がよっぽど親和性があった。

その女性誌がターゲットとする年齢層は「around27」と書かれており、正に私の年齢だ!と思うより先に、なぜアラサーと書かず歯にネギが挟まったような記述をするのかと入口でつまずく。確かにアラサーとは、若いと言いにくい年齢にさしかかった女性が自虐にも使用するネガティブな要素がなくはない言葉のため、使用を避けたいという気持ちも分からなくはない。しかし、around27はあまりにも中途半端ではないか、上限と下限がはっきりしないし(たぶん20代の後半戦を指すのだろうが)、そもそも文字数が多くて言いにくい(まだforever21とかcentury21の方が言いやすい)。

また、これは多くの女性誌に共通するが、このデフレ時代に物価が驚くほど高い。可愛いワンピースだなと思って値段を見ると複数人諭吉が必要な事態が多発している。こんな高価な洋服をばんばん揃えられる27歳は、芸能関係者か起業家か、太い金蔓(夫か実家が金持ち、ないしは実父ではないパパがいるなど)を有するごく一部の女性だろうが、そうした女性がわざわざこうした女性誌を買うかとはあまり思えない。

となるとやはり、読者の多くはごくありふれた一般人女性、すなわち私と近しい人間なのだろうが、彼女たちは嬉々としてこの雑誌を読むのかというのが最大の疑問であった。洋服は逆立ちしても買えそうにないので仕方なく芸能人のコラムを読んだのだが、とあるモデルによる読者へのマウンティングに悲鳴を上げそうになった。まずそのモデルは、「最近まで美容に気を使ったことがない」と仰っていたのだが、①美容に気を使わずともハイクオリティを維持できている自慢なのか、はたまた②全然勉強してないと嘯きテストでよい点を取り周囲を出し抜くようなタイプなのか、③と勘繰るこちらの悪意を引き出すことが目的なのか、どれであっても後味がよくない(④無意識、なら一番タチが悪い)。また、彼女は第一人称が「みぃ(仮)」だった。何を言っているかわからないと思うが私も最初は何を指しているのかさっぱり分からなかった。私が小学生のころすでに、ファーストネームを第一人称にすることは幼さか媚びとしてタブー視されていた記憶があるのだが、女性内の暗黙のタブーという土俵に土足で踏み込んでくる空気の読めない人間を、芸能人だから、と読者は逆に崇拝しているのだろうか。もしそうなら、この雑誌は心が宇宙世界なみに広い読者に支えられているだと思う、世の中捨てたものではない。

一方、雑誌編集者側は芸能人たちを心から尊敬していないのでは、と危惧せざるをえない箇所も散見された。天然キャラで通っているある女優について、「『ぽぇー』という謎な言葉を挟みながら」(うろ覚え)と紹介する。もちろん私は、対人関係で奇態を演じたら禁治産者扱いされても仕方がないと思うタイプだが、「この女謎だわ・・」と思ってもオブラートに包んで流し込んでしまうことが編集者には求められるのではないか。購読者でない私が身構えたところでただの杞憂かもしれないが(そうだったら全力で謝る所存)。

コラムにも動揺し(某男性アイドルプロダクション所属の国民的タレントによるコラムは、女性誌に男性を出す意味が分からないという宗教上の理由で読まず)、いよいよ行き場を失いかけたのだが、ユ〇クロの服着回しという庶民に優しいコーナーが用意されているではないかといそいそとページをめくった。しかし、期待に大きく反してそこにあったのは絶望であった。ユニ〇ロの服は最近とてもお洒落で、私はほぼ全身当該ブランドできめているくらい愛用しているのだが、あくまでファストファッションの中で相対的にお洒落というだけである。他のページがウン万円するお高い服でがちがちに固められている中では、数千円で買えてしまう洋服は、いくら可愛いモデルが着たからといってどうしたって安っぽく見えてしまう。ユニク〇を着てセレブのパーティーに出向き惨めな思いをした経験はないが、きっとこんな気持ちになるのではと激しい虚しさに襲われてしまった。スポンサーの一社がファーストリテイリングという大人の事情なら、そりゃビジネスですもん仕方ないですよね、と諦めもつくのだが。やはり人間、同レベルの階層にいた方が刺激はないが心地は良いなとしみじみ感じた。

 

そんなこんなで、ただでさえ美容院は苦手なフィールドであるのに、女性誌を読んで更に打ちのめされるという辛い1時間を過ごした。しかしながら、美容師さんは感じの良い若い男性で、美容院にリュックをしょいこんでノコノコやってくる私にも優しく髪も良い感じに仕上げてくれたので(前髪も後ろ髪もただ真っ直ぐ切ってくださいというオーダーに忠実に切ってくれた)それは大いに救いであった。全力で本音を言おうとしない女性誌に憤ったものの、美容師さんが色々あったであろう本音を言わずに大人の対応をしてくれたから、私のようにぶつくさ文句を言う輩がいても世の中が回るのだ。一番大人にならなければいけないのはほかでもない自分ですね。